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2022/02/14 11:29


*Kuebi = Armin Kübelbeck – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3038386による


Atelier Kyoto Nishijin(アトリエキョウトニシジン)は京都の西陣織を使った素敵な和雑貨をお届けしているオリジナルブランドです。西陣織と言えばシルクを使った高級織物の代名詞となっていますね、勿論シルク=絹ですが、品質表記には「正絹」と書いてある場合があります。

私たちの商品の品質表記は全て「絹」ではなく「正絹」とさせて頂いています。

皆さんは正絹(しょうけん)って聞いたことありますか?絹とあるので絹の別名かと思いますが、厳密には正絹と絹は別の物です。ネットで正絹と調べてみると正絹=天然の蚕からの絹糸と書かれている所がありました、間違いではないのですが少し気になったので記事にしました。


正絹(しょうけん)とは?


*個人所有の画像の為、無断転載禁止

正絹とは混じりっ気のない天然の蚕から取った絹糸の事を言います。本絹(ほんけん)とも言います。絹糸にするには蚕が繭にした糸からセリシンという不純物を取り除きますが、それを天然の絹糸として正絹と呼ぶのです。

何も混じっていないそのままの絹糸です。

ちなみに殆どが海外の輸入生糸を使用していると思います。(昔は養蚕も盛んに行われていましたが、今では少なくなってしまったので・・・)日本の蚕から作られた正絹は最高級の物として、まず一般向けには出回っていないと思います。

私が織物業界に居た時でも日本の生糸は使う機会すらなかったです。もし国産生糸の正絹を製品にしたら、超・超高級品になると思います、0が一個増えるのではないでしょうか。

正絹が天然の繭から取った何も混ぜていない絹糸の事です、では絹と正絹の違いは何でしょうか?


絹と正絹の違いとは?


*個人所有の画像です、無断転載はお止めください


天然の蚕からの絹糸なのに正絹表記が認められない場合があります。


それはグラフト加工(重合加工とも)を施した絹糸の表記は「絹」としか表記出来ない決まりがあるのです。

*グラフト加工とは取り除いたセリシンを再付着させた加工の事です。


何で一度取り除いたセリシンをもう一回くっ付けるんだよってなりますよね?


絹糸は天然の繊維の為、糸の太さや色などの個体差が大きく、それを製品に仕上げる一定の水準に満たす為には不良として省いてしまわないといけないのです。所謂ロス率と呼ばれるものが非常に高いので糸値が高くなります。


更にシルクは非常に細い繊維の為、肉厚な生地に仕上げるためには糸量が増えてしまいがちです。そうすると元々非常に高価な物がどんどん高くなるんですね。別に元々高級品だからちょっと位良いでしょって思われるかもしれませんが、ここでアパレル業界の悪い癖が出るんです。ちょっとでも安く売りたいって奴が・・・


そこでこのグラフト加工の出番です、別名「増量加工」とも言われていたりします。取り除いたセリシンを再付着させるので、糸自体が太くなって通常の糸量でもずっしりとした嵩高い織物に仕上がるわけです。


このグラフト加工は再布着のセリシンの量も調整出来るので、普通では出来ない糸の太さを後から調整出来たりもします。昔は悪い奴が居てグラフト加工した絹を正絹表記して売っていた奴が居たそうで、今では必ず表記が義務付けられています。・・・が、まぁ見ても絶対判りませんよ(笑)


私が以前織物業界に居た頃、グラフト加工をしたシルクを使う機会がありました。その際加工していないシルクと比べましたが、少し未加工品に比べて艶が無いなぁという感想です(個人の感想です)あとちょっとツルツルさが無いなと思いました。


ただグラフト加工が悪い加工の様な書き方になってしまいましたが、グラフト加工自体は非常に理に叶った加工です。元々天然の絹は糸の太さにバラツキがあったり、紫外線で黄変し易かったりするデメリットがありますが、グラフト加工はそのデメリットをカバーしてくれる優れた加工なのです。


最近では合成シルクとかもありますね、メチャクチャ出来が良いと思います。絹や正絹、合成シルクとそれぞれの良さがありますので、別々に楽しんで頂ければ良いと思います。



Atelier Kyoto Nishijin(アトリエキョウトニシジン)の商品は全て正絹を使った本物の西陣織の生地を使用しています


多分私たちの西陣織を依頼している機屋が「今日から正絹は使わぬ」って言わない限りはAtelier Kyoto Nishijin(アトリエキョウトニシジン)の商品はずっと正絹を使っていきます。


これには何点か理由があるのですが、私個人が余り肉厚でずっしりした生地を良いとは思っていないというのが一つ。もう一つは私たちは生地を売っているのでは無く「西陣織を使った和雑貨・和小物」をお届けしているブランドです。製品としての使い勝手には「重さ」というのも非常に重要な要素と考えています。軽く美しくそして使いやすい、そんな商品を生み出す為には出来るだけ軽く精細に生地を仕上げる必要があるのです。


Atelier Kyoto Nishijin(アトリエキョウトニシジン)で目指しているのは細い糸で極限まで打ち込みを入れた薄くて張りのある生地なのです。ペラペラですが打ち込みを入れた生地は目が詰まって柄も非常に細かく美しいのです。100万画素の画像より200万画素の方が2倍情報量があって綺麗ですよね?それに良く似ています。それを再現するにはグラフト加工をした糸は不向きなのです。


製品として手に取った時に「こんなに繊細で美しい織物があるんだ」と日本の職人技に感動して頂きたいです、これからも混じりっ気のない絹本来の風合いを楽しめる、素敵な和雑貨をお届けしていきたいなと思っています。


是非一度手に取ってご感想お聞かせください。